彼らはどこにでもいる。
街に。学校に。会社に。家庭に。
人知れず彼らは紛れ込み、ささやかな力添えで人々を導く。
天使は人々を幸せに。
悪魔は人々を不幸に。
それが、彼らの使命で、仕事だ。
天使の力を借りて、世界一となった人がいる。
悪魔にそそのかされて、命を絶った人がいる。
彼らはどこにでもいる。しかし人々は、そのことを知らない。
天使と悪魔に関わった人々の、幸せと不幸の話。
西澤将(にしざわしょう)には、夢があった。
「バスケで誰よりも強くなる」
中学で全国大会に出場し、高校にもバスケの推薦で入学した。
将には夢も、チャンスも、才能もあった。
事故でその腕に障害を負うまでは。
「おはよう、将ちゃん。朝ご飯できてるよ」
毎朝、朝食を作りに来てくれる幼馴染みの久美(くみ)。
献身的な幼馴染みとの日常は心地よく、でもどこか歪で――
バスケットの無い日常は、とても退屈だった。
稲田智則(いなだとものり)はずっと、剣の道を歩んできた。
脇目もふらず竹刀を振り続け、中学で全国優勝を果たし、
注目のルーキーとして高校へと進学した。
入学から一年。智紀は自他共に認める、剣道部のエースだ。
「智ちん強いもんねー。ばしぃーん! 一本!」
智則は、片想いしていた。
親友であるヒロシの幼馴染み、忍(しのぶ)こそが、その相手だ。
「インターハイで優勝したら、忍に告白する」
智紀は、より一層の気合いをこめて、竹刀を振り下ろす。
想いは届くと信じて。
早川良太(はやかわりょうた)は、孤児だった。
幼くして両親に捨てられ、同じ境遇の子供と共に施設で育った。
しかし良太は、自分の境遇を嘆いたことはない。
同じ施設で育った、幼馴染みで恋人の結佳(ゆか)の存在があったからだ。
高校からの友人である洋二(ようじ)と奈津子(なつこ)、
働き先の喫茶店のマスター。
良き友人たちに囲まれて、良太の日常は賑やかだ。
「良太くん。ずっと一緒にいてね」
「ずっと一緒にいる」
ありふれた日常の中に、良太は幸せを感じていた。
結佳が病に倒れる、その時までは。
苦しみの日々の中で、良太が見いだすのは幸せか、それとも……
